今回は制限行為能力者についてです。
この項目は行政書士試験で非常に頻出です。
一つずつ確実に見ていきましょう。
1. 制限行為能力者
契約をする際や法律行為が制限されている者です。
4種類ありますので確実に覚えていきましょう。
1-1. 未成年
18歳未満の者を指します。一番なじみのある言葉ですね。(私の時は20歳未満でしたが・・・)
この未成年者の保護者は原則として親権者ですが、それ以外の場合は未成年後見人が選ばれます。
未成年が法律行為を行うには、親権者=法定代理人の同意や代理が必要になります。
法定代理人には、代理権、同意権、取消権、追認権が与えられています。
基本的に法律行為が制限されていますが、以下の場合は単独で行うことができます。
- 単に権利を得、または義務を免れる法律行為
(負担のない贈与を受ける契約など) - 目的を定めて処分が許された財産の処分
(入学金など、目的が定まっている金銭の支払いなど) - 目的を定めずに処分が許された財産の処分
(親にもらったお小遣いで買い物など) - 許可を受けた一種または数種の営業に関する行為
(親から肉屋の営業を許可された場合の当該営業に関する契約)
上記に挙げた営業の許可ですが、どの営業をしてもよいといった許可や、一種の営業のうちの一部の行為のみを許可することはできず、法定代理人はいつでもその許可を取消したり制限することができます。また、その営業に堪えることができない事由がある場合には、法定代理人はいつでも営業の許可を取消、または許可を制限することができます。
事業を行う未成年者は、大人と同じ扱いとなり、自由に単独で法律行為を行うことができるんですね。
1-2. 成年被後見人
成年被後見人とは、
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の審判を受けた者
を言います。原則として、単独で行える法律行為はありません。
後見開始の審判は、本人、配偶者、4親等内の親族、保佐人、補助人、検察官等が家庭裁判所に請求することができます。
後見開始の審判をする際に本人が被保佐人や被補助人である場合には、家庭裁判所は、その本人に係る従前の保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければなりません。
成年後見人と呼ばれる保護者が付され、これは未成年者に対する親権者と同じく成年被後見人の財産管理に関する代理権も認められているため、法定代理人とも呼ばれています。
原則として、成年被後見人の法律行為は成年後見人が代理して行い、また成年後見人の同意を得て本人がした行為であっても取り消すことができます。
ただし、日常品の購入その他日常生活に関する行為は単独ですることができます(後で取り消すことはできない)
成年被後見人には、代理権、取消権、追認権が与えられています。
同意権がないのは、成年被後見人には同意すべき法律行為を自らができないからです。
1-3. 被保佐人
被保佐人とは、
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所の審判を受けた者
です。成年被後見人よりは症状が軽い状態なので、原則として単独で法律行為をすることができます。
保佐開始の審判は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、補助人、検察官等が家庭裁判所に請求することができます。
保佐人が付され、原則は代理権はありませんが、家庭裁判所は特定の法律行為について保佐人に代理人を付与する審判をすることができます。本人以外の者からの請求によるものは、本人の同意が必要です。
保佐人には、同意権、取消権、追認権、(例外)代理権 が与えられています。
前述に、単独で法律行為をすることができると言いましたが、下記は保佐人の同意が必要となります。
これらの行為について被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意しない場合は、家庭裁判所は被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。
- 元本を領収し、または利用すること
(利息のみを受け取ることはできる) - 借財または保証をすること
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
- 訴訟行為をすること
- 贈与、和解または仲裁合意をすること
- 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
- 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること
- 新築、改築、増築または大修繕をすること
- 602条に定める期間を超える賃貸借をすること
(山林10年、その他土地5年、建物3年、動産6カ月) - 以上の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
- その他、家庭裁判所の指定した行為
1-4. 被補助人
被補助人とは、
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所の審判を受けた者
で、被保佐人よりも症状が軽いです。
補助開始の審判は、本人以外からの請求の際には、本人の同意が必要になります。
補助開始の審判は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、保佐人、検察官等が家庭裁判所に請求することができます。
補助人が付きますが、同時に同意権付与の審判と代理権付与の審判を行わなければなりません。
これらの審判についても、本人以外からの請求の際には、本人の同意が必要になります。
上記の同意権についてですが前述した、被保佐人が保佐人の同意を要する行為のうちの一部に限られています。
補助人には、家庭裁判所の審判によって、同意権、代理権、取消権、追認権、が与えられます。
保佐人の場合と同様、補助人の同意を得なければならないとされた行為について被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず補助人が同意しない場合は、家庭裁判所は被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができます。
2. 行為を実際に取り消す場合
取り消すことのできる制限行為能力者の行為は、本人と保護者が取り消すことができます。
原状回復義務と言い、行為に関わった当事者は受け取った物や金銭等を返還する義務を負います。
ただし、行為の時点で制限行為能力者の場合は、その行為によって現に利益を受けている限度でのみ返還の義務を負います。
例えば、遊びに使ってしまい手元にない場合はその分の返還の義務はなくなります。
逆に、受け取った金銭を他の有用な費用に充てた場合(学費や生活費等)、これは形を変えて残っていると考えているということで、返還の義務が生じます。
3. 制限行為能力者の相手側の権利
制限行為能力者の相手側(契約の相手側)には、制限行為能力者本人とその保護者に対して、契約をどうするのかどうかについての催告権という権利が認められています。
制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者)となった後、本人に対し1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされます。
ちなみに、行為能力者とならない間にした本人への催告は無効となります。
制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされます。
また、被保佐人や被補助人に対しては、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができますが、この場合においては、その期間内に確答を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされます。
ちなみに、1か月未満の期間を定めた催告は無効となります。
これらの場合ですが、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
ただ、単に制限行為能力者であることを黙っていたのみの場合は詐術に当たりませんが、他の言動とあいまって相手方を誤信させ、または誤信を強めたときは詐術に当たります。
4. まとめ
それぞれの制限行為能力者見ていきました。
行政書士試験全体としてみると初歩的な内容ですが、
忘れやすい内容でもありその上出題率も高いのでしっかりと覚えていきたいです!
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